むし


むしにしろムシにしろ虫にしろほんとにあいつら*1をよくあらわしている。
「む」っていうくねくねとへんなまがりかたをしてる字と、
「し」っていう空気をシッと吐き出すどこかぶしつけな発音を持つ字の組み合わせ。


カタカナや漢字についても非常に高い精度で対象を捉えた文字である。
どれも人々のなかにある形象をうまいぐあいに実体化している。


だけど、もしかしたら言葉に先行されたイメージを形作ってしまっているだけかもしれないが。


けれども、むし、ムシ、虫という字は、字が概念をとらえる言葉としての圧倒的なパワーをもっている。
何度もつぶやき、文字を思い浮かべることで、まさに心の中にある虫という存在を外に開放できる。


実態としての虫の存在と字に表れる虫の存在が巨大な力で拮抗していて絶妙なバランスを保っている。


俺のなかではそういう位置づけの文字である。

*1:言葉ができる前だと考えて、単純にいま虫と呼ばれるものの漠然な印象をおもいうかべてほしい。