卵という舟


世界。
言葉の由来は知らないが思想上ではとてつもない力があるようだ。
この言葉一つでなにが説明できないのだろうか。
すべての物事がこの言葉一つで丸くおさまってしまう。


私が描く世界のイメージは球だ。
透明で粘性のある水中生物の卵のような球の
なかにその世界のあらゆるものが包みこまれている。


しかしその世界を破り、出てくるものもいる。
耐えられなくなって突き出していく。
そして新しい卵のなかに入っていくのだ。


卵同士は水中で浮遊するように近づいたり遠ざかったりする。
時にはぶつかって割れてしまうこともある。
くっついて新しく大きな卵になってしまうこともある。
外を満たすものに運ばれてありとあらゆるところを彷徨う。


誰もその卵の流れ着く先はわからない。
しかし、もしかしたらその世界の住人の意志によって、
卵は行き先を決めているのかもしれない。