『Accordion』 Madvillain

MADVILLAINY

MADVILLAINY


上記アルバムの二曲目に収められた曲。
この曲を聴いていて感じるものが、
おそらくHip-Hopの世界でよく出てくるdoop(ドープ)という感覚なんだろう。
私はこの曲で初めてそれを味わい実感した。


どうやらdoopというのは「薬物的な」という意味らしい。
私が曲を聴いていて感じるのも、「なんかやめられない。」という
軽い中毒症状のようなものだから、やっぱりdoopなんだろう。
トラックは、聴いていて興奮したり高揚感が沸き上がってくるというものではない。
むしろ、何回聴いても暗くイジイジしているし、
同じような音やラップが念仏のようにループし続けて、
終わりがいつなのかもわからないまま音が途切れてしまうという
なんとも地味な存在感を放つ。


しかしこのきわめて地味で、一人でイジイジしているようにしか
聴こえない曲はいつの間にか私を捉えて放さなくなった。
取り憑いてしまわれたような感じで、ずーっとこの曲がループしっぱなしだ。
別に、ずっと聴いていたいという意思はないはずなのだが、
どういうわけかこの曲のループを止めるという気にもならない。


そのうちにどうやら私はこの曲をわざわざループしなければ気が済まなくなってしまったみたいだ。
手が勝手に一曲リピート再生のボタンへと伸びてしまう。
そしてまた、どことなく憂鬱さを感じさせるが、
決してこちらの領域に踏み込んでこない距離感でこの曲は鳴り続ける。
ある種のやさしさや癒しという効用があるのかもしれない。


さて、しまいには依存症的な症状が現れてきてもうこの曲しか聴けなくなってしまった。
もう激しい浮き沈みのある曲は受け付けないという始末。
まさにdoopである。
こりゃ大変だ。
注意してかからんと本当に帰って来れないかもしれない。