2005/10/12


道を歩いていると独特の癖のある匂いがしてくる。
カリッという感触と共に何かを踏みつぶしてしまった。
落ちているイチョウの葉は黄色い。
・・ああ、今年もこの時期になったのか。


前から歩いてくる人は松葉色のカーディガンを羽織っている。
フードをかぶった黒のパーカーの男とにこやかに話している。
少し色づいた木の葉を通って落ちてくる光は温かくて柔らかい。
曖昧で生暖かくて自然と気が緩む。
夢の中のような浮遊感に包まれている。


おかしいな、こんなはずはない、と思った。
永遠に続きそうな目の前の光景は、実際はひどく不安定なのではないか。
きっと今日のような日は長くは続かないだろう。